RPE(自覚的運動強度) ベンチプレスとは?RPE8の目安と重量設定を解説
ベンチプレスのトレーニングをしていると、
- 「今日はいつもより重量が重く感じる」
- 「昨日は100kgが軽かったのに、今日は同じ100kgが重い」
- 「トレーニングメニューに100kg×5回と書いてあるけど、今日は5回できそうにない」
このような経験をすることがあります。
ベンチプレスの重量設定では、「1RMの何%で行う」という方法がよく使われます。しかし、同じ人でも睡眠、疲労、食事、仕事、前回のトレーニングからの回復状態などによって、その日のパフォーマンスは変化します。
そこで役立つのがRPE(Rate of Perceived Exertion)です。
RPEを使うと、「何kgを持つか」だけではなく、その重量を何回分の余力を残して挙げたのかという視点から、トレーニングの負荷を調整できます。
この記事では、RPEの基本からRIRとの違い、ベンチプレスでの具体的な重量設定、初心者がRPEを判断する方法、さらに中上級者がRPEをトレーニングに取り入れる際のポイントまで解説します。
この記事のポイント:ベンチプレスのRPEは「あと何回できたか」で考える
ベンチプレスで使うRPEは、簡単に言えばセット終了時に「あと何回できたか」を10段階で表したものです。
目安は次のようになります。
| RPE | RIR(あと何回できるか) | セット終了時の感覚 |
|---|---|---|
| RPE10 | 0回 | もう1回もできない |
| RPE9 | 1回 | あと1回ならできる |
| RPE8 | 2回 | あと2回ならできる |
| RPE7 | 3回 | あと3回程度できる |
| RPE6 | 4回程度 | まだかなり余裕がある |
例えば、ベンチプレスで100kgを5回挙げて、
「あと2回ならできた」
と感じたなら、そのセットはおおむねRPE8です。
RPE10が「限界」、RPE9が「あと1回」、RPE8が「あと2回」というように覚えると分かりやすいでしょう。
ポイント
RPEは「高ければ高いほど良い」という数字ではありません。ベンチプレスのトレーニングでは、目的に合わせてRPEを設定することが重要です。
また、RIRによる自己評価は、実際のトレーニング負荷を調整する方法として研究でも利用されており、ベンチプレスを含む筋力トレーニングで活用できることが報告されています。
RPE(自覚的運動強度)とは?ベンチプレスで使う意味を理解しよう

RPEとは、Rate of Perceived Exertionの略です。
日本語では「自覚的運動強度」と表現されます。
簡単に説明すると、
「今やっている運動が、自分にとってどれくらいきついのか」
を数字で表す考え方です。
ただし、筋力トレーニング、とくにベンチプレスでRPEを使う場合は、単純に「きつかった」という感覚だけで判断するわけではありません。
重要になるのがRIR(Reps In Reserve)です。
RIRとは「あと何回できるか」という考え方
RIRは、
Reps In Reserve
の略です。
日本語にすると、「残している反復回数」「あと何回できるか」という意味になります。
例えば、
80kg×8回
を行ったとします。
8回目を終えた時点で、
「まだあと3回くらいできそう」
と感じたなら、RIR3です。
つまり、
RIR3=あと3回できる余力がある
ということです。
RPEは、このRIRと反対方向に考えると分かりやすくなります。
| RIR | RPE |
|---|---|
| RIR0 | RPE10 |
| RIR1 | RPE9 |
| RIR2 | RPE8 |
| RIR3 | RPE7 |
このため、RPEを理解するためには、まず「自分はあと何回できるのか?」を考えるとよいでしょう。
なぜ「重量」だけではなくRPEを見るのか
ベンチプレスのメニューを、
100kg×5回
と決めていたとします。
しかし、人間のコンディションは毎日同じではありません。
例えば、
- 前日に睡眠時間が短かった
- 仕事や学校で疲れている
- 前回のベンチプレスから十分に回復していない
- 食事量が少なかった
- 長時間の活動で疲労している
- 精神的なストレスが大きい
などの条件によって、同じ100kgでも体感が変わることがあります。
逆に、しっかり睡眠を取って回復している日は、普段より重量が軽く感じられることもあります。
ここで「100kgを5回やる」という数字だけにこだわると、調子が悪い日に無理をしてしまう可能性があります。
RPEを使えば、
「今日は100kg×5回だとRPE9.5だから重すぎる」
あるいは、
「今日は100kg×5回でもRPE7なので余裕がある」
という判断ができます。
つまりRPEは、その日の状態をトレーニングメニューに反映させるための道具として使えるわけです。
ベンチプレスのRPEは何を基準に判断すればいい?

RPEを初めて使う人が一番迷うのが、
「RPE8って、実際どのくらいきついの?」
という部分です。
最初から正確に判断する必要はありません。
まずは「あと何回できるか」を基準にしてみましょう。
RPE10は「限界」
RPE10は、そのセットでもう1回もできない状態です。
例えば100kgを5回行い、5回目が限界だったとします。
6回目を行おうとしても、フォームを維持して挙げられないのであればRPE10です。
ただし、RPE10を毎回目指す必要はありません。
むしろ、ベンチプレスを長期的に伸ばすことを考えるなら、毎回限界まで追い込むことだけが正解ではありません。
RPE9は「あと1回」
RPE9は、
「あと1回ならできそう」
という状態です。
例えば、
100kg×5回
を終えて、
「6回目も何とか挙げられそう」
という場合はRPE9の目安です。
かなり高い強度なので、メインセットの最後などで使われることがあります。
RPE8は「あと2回」
RPE8は、
「あと2回くらいできる」
という状態です。
ベンチプレスのトレーニングでは、非常に使いやすい目安です。
例えば、
100kg×5回 RPE8
なら、
「100kgを5回挙げた時点で、限界まであと2回程度の余力があった」
という意味になります。
「100kgを5回できた」という情報だけよりも、
「100kgを5回、RPE8でできた」
と記録した方が、その日の状態を詳しく残せます。
RPE7は「あと3回」
RPE7は、
「まだあと3回くらいできる」
という状態です。
高重量の限界に近づけるというより、フォームを確認したり、ボリュームを確保したりする場面で使いやすい強度です。
初心者の場合、まずはRPE7〜8程度から「自分の感覚」を覚えていく方法もあります。
RPEを使ったベンチプレスの重量設定方法
ここからがRPEを実際のトレーニングで使う方法です。
例えば、現在のメニューが、
ベンチプレス 100kg×5回×3セット
だったとします。
これを、
ベンチプレス 5回×3セット RPE8
という設定に変えてみます。
すると、100kgに固定する必要がなくなります。
調子が普通なら100kg
1セット目に100kgを5回行い、
「あと2回くらいできそう」
ならRPE8です。
そのまま100kgで続けることができます。
例えば、
- 1セット目:100kg×5回 RPE8
- 2セット目:100kg×5回 RPE8
- 3セット目:100kg×5回 RPE8.5
という結果になったとします。
これは十分に狙った範囲に入っています。
調子が悪ければ重量を下げる
例えば、その日の体調が悪く、
100kg×5回=RPE9.5
だったとします。
この場合、
「メニューに100kgと書いてあるから、何としてでも100kgで3セットやる」
と考える必要はありません。
次のセットから、
97.5kg
などに重量を下げます。
そして、
97.5kg×5回=RPE8
を狙います。
これがRPEを使ったオートレギュレーション、つまりその日の状態に応じてトレーニング負荷を調整する考え方です。
調子が良ければ重量を上げる
反対に、
100kg×5回=RPE7
だった場合はどうでしょうか。
「あと3回くらいできそう」ということなので、設定したRPE8より軽かったことになります。
その場合は、
102.5kg
に上げて、
102.5kg×5回 RPE8
を狙うこともできます。
このように、
- 調子が悪い日は下げる。
- 調子が良い日は上げる。
という柔軟な調整ができることがRPEの大きなメリットです。
RPEと1RM%はどちらが優れている?実は使い分けが重要

ベンチプレスの重量設定では、RPEだけを使えばいいわけではありません。
1RMに対する割合(%1RM)にも大きなメリットがあります。
例えば1RMが120kgなら、
| 1RMに対する割合 | 重量 |
|---|---|
| 70% | 84kg |
| 80% | 96kg |
| 90% | 108kg |
というように、重量を具体的に決められます。
初心者にとっては非常に分かりやすい方法です。
一方で、%1RMには一つ問題があります。
「同じ%でも、毎回同じRPEになるとは限らない」
ということです。
例えば1RMの80%を96kgとしても、
ある日は96kg×5回がRPE7。
別の日は96kg×5回がRPE9。
ということが起こり得ます。
そのため、
| 指標 | 役割 |
|---|---|
| %1RM | 計画を立てるための基準 |
| RPE | その日の状態を確認する基準 |
として併用すると使いやすくなります。
初心者は「%1RM+RPE」から始めると分かりやすい
例えば、
80kg×5回 RPE7〜8
というように、最初はある程度の重量を決めておき、実際に挙げてみた結果で調整します。
これなら、
「RPE8にするために何kgを持てばいいのか分からない」
という初心者でも始めやすくなります。
最初からRPEだけで重量を決める必要はありません。
むしろ初心者の場合は、
- 重量
- 回数
- RPE
を記録するという順番で経験を積んだ方が、自分の感覚を理解しやすいでしょう。
初心者がRPEを正確に判断できないのは普通
RPEを使い始めたばかりの人が注意したいのが、
「自分のRPEを過信しない」
ことです。
例えば、
「あと2回できたからRPE8」
と思っていても、実際に2回追加したらさらに2回できるかもしれません。
この場合、本当のRIRは4程度だった可能性があります。
反対に、
「あと2回できる」
と思っていたのに、次の1回で失敗することもあります。
RPEには主観的な判断が含まれるため、経験や疲労、トレーニング環境などによって誤差が生じます。研究でも、RIRは実用的な指標である一方、その判断には個人差や負荷による違いがあることが指摘されています。
RPEを覚えるために「たまに限界を経験する」
では、初心者はどうすればRPEを覚えやすいのでしょうか。
一つの方法は、トレーニングの中で安全に管理しながら、
「自分にとって本当の限界がどこなのか」
を経験することです。
限界を知らなければ、
「あと2回できる」
という感覚が本当にRIR2なのか判断できません。
ただし、ベンチプレスで限界まで行う場合は、セーフティバーや補助者を用意するなど、安全面を優先してください。
毎回限界までやる必要はありません。
あくまで自分の感覚を学習するための経験として考えることが大切です。
RPEは「その日の気分」ではない
もう一つ重要なのが、
「今日は疲れているからRPE9」
と決めるものではないということです。
RPEは、
「疲れている気がする」
ではなく、
実際にそのセットを終えたとき、あと何回できたのか
を基準にします。
例えば、
「今日は疲れているから80kgはRPE9だろう」
と決めつけるのではなく、
80kgを実際に挙げてみて、
「5回終わった時点であと2回できそうだった」
ならRPE8です。
このように、事前の予想とセット終了後の評価を分けることがRPEを使ううえで重要です。
中上級者はRPEを「重量を決める数字」だけにしない
ここからは、ベンチプレスを長く続けている人向けの話です。
中上級者になると、RPEは単純な「あと何回できるか」だけではなく、トレーニングの状態を管理する情報として使えるようになります。
例えば、
110kg×3回 RPE8
という記録があったとします。
次の週に、
110kg×3回 RPE7
になったのであれば、
「110kgが軽くなった」
というだけではなく、
同じ重量・回数に対して余力が増えた
と判断できます。
これは次の重量設定を考えるうえで重要な情報です。
「重量」ではなく「重量×回数×RPE」で成長を見る
例えば、
1週目
100kg×5回 RPE9
2週目
100kg×5回 RPE8
3週目
102.5kg×5回 RPE8
となった場合、
単純に見ると、
「100kg→102.5kgに増えた」
だけです。
しかしRPEまで記録すると、
同じ100kgを以前より余裕を持って扱えるようになり、その結果102.5kgへ進めた
という変化が見えてきます。
これは中上級者ほど重要です。
重量だけを追っていると、
「今日は何kg挙げた」
という結果しか残りません。
しかし、
重量・回数・RPE
をセットで記録すると、
「どれくらいの努力で、その重量を扱えたのか」
まで分かります。
RPEが急に高くなったときは「重量」以外も疑う
中上級者にとって、RPEは疲労管理のヒントにもなります。
例えば普段、
100kg×5回=RPE8
なのに、突然、
100kg×5回=RPE9.5
になったとします。
ここで単純に、
「今日は弱くなった」
と考える必要はありません。
睡眠、食事、疲労、トレーニング頻度、前回のボリュームなど、複数の要因を確認する必要があります。
さらにベンチプレスでは、フォームの変化も重要です。
例えば、
- 肩甲骨の位置が安定していない
- 足の踏ん張りが弱い
- バーの軌道が普段と違う
- 胸での受け方が変わっている
- 下半身との連動がうまくいっていない
などがあれば、同じ重量でもRPEが高くなることがあります。
つまり、
RPEが高い=筋力が落ちた
とは限りません。
RPEの変化をきっかけに、
「なぜ今日は重かったのか?」
を考えることが、中上級者のトレーニングでは重要になります。
RPEをベンチプレスの重量設定に取り入れて記録を伸ばそう

RPEは、難しい専門用語に見えるかもしれません。
しかし、基本的な考え方は非常にシンプルです。
「このセットを終えたとき、あと何回できた?」
これだけです。
もう一度、基本を整理しましょう。
| RPE | 余力の目安 |
|---|---|
| RPE10 | あと0回 |
| RPE9 | あと1回 |
| RPE8 | あと2回 |
| RPE7 | あと3回 |
| RPE6 | あと4回程度 |
そして、ベンチプレスでは、
「何kgやったか」だけでなく「何kgを何回、RPEいくつでできたか」
を記録することがポイントです。
例えば、
100kg×5回 RPE8
と記録しておけば、
「100kgを5回できた」
だけではなく、
「100kgを5回行っても、まだ2回程度の余力があった」
という情報が残ります。
RPEは「頑張るため」の数字ではない
RPEについて誤解してほしくないのは、
RPEを高くすることが目的ではない
ということです。
RPE10まで追い込めば必ず成長するわけでもありません。
トレーニングの目的や経験、種目、ボリュームなどによって、適切な負荷は変わります。
研究でも、限界までの距離と筋力・筋肥大の関係は単純ではなく、特に筋力向上については「できるだけ限界に近づけば近づくほど必ず良い」とは言い切れない結果が報告されています。
だからこそ、
「今日はRPE8で終える」
という判断にも意味があります。
無理に限界まで追い込まず、次のセット、次のトレーニング、さらにその先まで考えて負荷を管理する。
これがRPEを活用する大きなメリットです。
吉川導場で考える「RPE」の使い方
ベンチプレスを長く続けていると、
「100kgを挙げられるか」
だけではなく、
「今の自分は、100kgをどのくらいの余力で挙げられるのか」
という視点が重要になってきます。
吉川望は、20年以上の競技歴と14年以上の指導経験を持ち、元ベンチプレス日本代表として世界4位を経験しています。
その経験から見ても、ベンチプレスの記録を伸ばすためには、単純に重量を追い続けるだけではなく、
- 現在のフォーム
- トレーニング頻度
- セット数
- 重量
- 疲労状態
- 回復状況
- その日のパフォーマンス
などを総合的に見ていくことが重要です。
RPEは、その中の一つとして非常に便利な指標です。
特に、
「メニュー通りにやっているのに重量が伸びない」
という人は、重量だけではなくRPEも記録してみてください。
同じ100kgでも、
100kg×5回 RPE9
なのか、
100kg×5回 RPE7
なのかでは、トレーニングの意味が大きく変わります。
そして、その違いを何週間、何か月と記録していくことで、自分自身のトレーニングをより正確に把握できるようになります。
RPEは、単なる「きつさの数字」ではありません。
その日の自分の状態を知り、ベンチプレスの重量を適切に調整するための判断材料です。
まずは次回のベンチプレスから、
「重量・回数・RPE」
の3つを記録してみてください。
最初から完璧にRPEを判断できなくても問題ありません。
「あと何回できたか?」を毎回考える習慣をつけるだけでも、ベンチプレスのトレーニングに対する見方は変わってきます。
そして、100kg、120kg、140kgとさらに記録を伸ばしていきたい人ほど、単純に「重い重量を挙げる」だけではなく、
「今の自分にとって、どの程度の負荷が適切なのか」
を考えることが重要になります。
RPEを上手に活用して、自分の状態に合わせたベンチプレスのトレーニングを組み立てていきましょう。

