ベンチプレス 5/3/1プログラム|重量設定とやり方を解説
「ベンチプレスの重量を伸ばしたいけれど、毎回どの重量で何回やればいいのか分からない」
「いつも限界までベンチプレスをしているけれど、なかなか記録が伸びない」
「5/3/1というトレーニング方法を聞いたけれど、ベンチプレスではどう使えばいい?」
そんな人に知っておいてほしいのが、5/3/1(ファイブ・スリー・ワン)プログラムです。
5/3/1は、Jim Wendler(ジム・ウェンドラー)氏によって考案された筋力向上プログラムで、ベンチプレスを含む主要なバーベル種目の重量を長期的に伸ばしていくための方法として知られています。公式情報では、実際の1RMより低い「トレーニングマックス(TM)」を基準に重量を設定することが重要とされています。
この記事のポイント
5/3/1は「毎回限界重量に挑戦する」のではなく、余裕を持った重量からスタートし、トレーニングを継続しながら少しずつ基準重量を引き上げていくプログラムです。
ベンチプレスで重要なのは、今日の1回だけを重くすることではありません。
100kgを1回挙げられる人が、無理をして102.5kgに挑戦することよりも、半年後、1年後に110kg、120kgと伸ばせる状態を作ることのほうが重要です。
この記事では、ベンチプレス初心者でも分かるように5/3/1の基本から重量設定、4週間の進め方まで解説します。
さらに後半では、「5/3/1をやっているのにベンチプレスが伸びない」場合に、どこを見直せばいいのかについても、ベンチプレス専門の視点から解説します。
ベンチプレスの5/3/1プログラムとは?

ポイント
5/3/1とは、1RMより低く設定した「トレーニングマックス」を基準に、週ごとに重量と回数を変化させながら筋力を伸ばしていくプログラムです。
5/3/1という名前を初めて聞くと、
「5回、3回、1回だけやるの?」
と思うかもしれません。
しかし、実際にはもう少し複雑です。
基本的な5/3/1では、3週間かけて重量を変化させ、その後に負荷を落とす期間を設けます。
大まかな流れは、以下のようになります。
- 1週目:5回を中心に行う
- 2週目:3回を中心に行う
- 3週目:5回・3回・1回を中心に行う
- 4週目:デロード
デロードとは、簡単に言えば意図的にトレーニングの負荷を下げて疲労を抜く期間です。
ここで重要なのが、各週の重量を何から計算するかです。
5/3/1では「1RM」ではなく「トレーニングマックス」を使う
ポイント
5/3/1では、実際の1RMをそのまま基準にするのではなく、基本的に1RMの90%を目安にした「トレーニングマックス(TM)」を基準に重量を計算します。
1RMとは、その種目を1回だけ挙げられる最大重量のことです。
例えばベンチプレスの1RMが100kgなら、
1RM=100kg
です。
そこから90%を計算すると、
100kg × 0.9=90kg
となります。
この90kgをトレーニングマックス(TM)として使います。
つまり、5/3/1では、
「100kgの90%だから90kg」
というだけではありません。
「90kgを100%として、そこから各セットの重量を計算する」
という点が重要です。
例えばTMが90kgなら、
- 90kg × 65%=58.5kg
- 90kg × 75%=67.5kg
- 90kg × 85%=76.5kg
というように計算します。
公式の5/3/1情報でも、TMは実際のベストリフトより低く設定する考え方が示されており、「迷った場合は軽いほうに設定する」という考え方も紹介されています。
これは5/3/1を理解するうえで非常に重要なポイントです。
【ベンチプレス5/3/1の重量設定と4週間のやり方

ポイント
基本的な5/3/1では、TMを基準に1週目・2週目・3週目で重量を上げ、4週目に負荷を落として次のサイクルへ備えます。
ここからは、実際にベンチプレスで5/3/1を行う場合を考えてみましょう。
例として、
ベンチプレス1RM=100kg
とします。
まず、
100kg × 90%=90kg
なので、
トレーニングマックス=90kg
とします。
ここから重量を計算していきます。
1週目:5回を中心に行う
ポイント
1週目は比較的軽めの重量で5回を行い、ベンチプレスのフォームとトレーニング量を安定させます。
基本的な設定は、
- 65% × 5回
- 75% × 5回
- 85% × 5回以上
です。
TMが90kgなら、
- 90kg × 65%=58.5kg
- 90kg × 75%=67.5kg
- 90kg × 85%=76.5kg
となります。
実際のジムでは0.5kg刻みのプレートがないこともあるため、使用できる重量に合わせて57.5kg、67.5kg、77.5kgなどに調整します。
ここで初心者が勘違いしやすいのが、
「85%だからかなり軽い」
ということです。
85%という数字は1RMの85%ではありません。
あくまでTMの85%です。
1RM100kgの場合、TMは90kgなので、
90kg × 85%=76.5kg
です。
つまり、1RMに対しては約76.5%になります。
この「二重に%をかける」ような仕組みが、5/3/1を最初に見たときに分かりにくい部分です。
2週目:3回を中心に重量を上げる
ポイント
2週目は1週目より重量を上げ、3回を中心に高重量への適応を進めます。
2週目は、
- 70% × 3回
- 80% × 3回
- 90% × 3回以上
が基本です。
TM90kgなら、
- 63kg
- 72kg
- 81kg
が計算上の重量になります。
実際には、
- 62.5kg
- 72.5kg
- 80kg
など、ジムのプレートに合わせて調整できます。
1週目より重量は重くなりますが、回数は5回から3回へ減っています。
このように、
重量を上げる → 回数を減らす
という流れによって、高重量に身体を適応させていきます。
3週目:5・3・1で高重量に挑戦する
ポイント
3週目は5/3/1の中で最も重量が高くなり、最後のセットでは1回以上の挙上を狙います。
3週目は、
- 75% × 5回
- 85% × 3回
- 95% × 1回以上
が基本です。
TM90kgなら、
- 67.5kg × 5回
- 76.5kg × 3回
- 85.5kg × 1回以上
となります。
ここで注意したいのが、「1回以上」という言葉です。
これは、
「毎回限界まで何回もやる」という意味ではありません。
5/3/1では、トレーニングの質を維持しながら長期的に進めることが重要です。
公式の初心者向け5/3/1でも、バーベルのレップはフォームを維持できること、動作が極端に遅くなるような無理なレップを避けることが強調されています。
4週目:デロードする
ポイント
4週目は重量を落として疲労を抜き、次のサイクルで再び重量を伸ばせる状態を作ります。
4週目は、
- 40% × 5回
- 50% × 5回
- 60% × 5回
など、負荷を大きく下げます。
ここで、
「軽すぎるから意味がない」
と思う必要はありません。
5/3/1では、トレーニングを続けるために疲労を管理することも重要だからです。
ベンチプレスは筋肉だけでなく、関節や腱、神経系、フォームを維持するための集中力などにも負荷がかかります。
3週間しっかりトレーニングした後に一度負荷を落とすことで、次のサイクルにつなげやすくなります。
ベンチプレス5/3/1で重要なのは「重量」だけではない
ポイント
5/3/1でベンチプレスを伸ばすには、設定重量だけでなく、フォーム・レップの質・トレーニング頻度・総ボリュームまで管理することが重要です。
ここが、単純な「5/3/1の計算方法」だけでは説明しきれない部分です。
ベンチプレスの記録を伸ばすには、
「重量 × 回数」
だけを見ていてはいけません。
例えば、同じ80kgを5回挙げたとしても、
Aさんは毎回胸でバーが安定して止まり、足も動かず、一定の軌道で挙げている。
一方でBさんは、腰が大きく浮き、バーが毎回違う場所に下り、最後の2回はフォームが崩れている。
この2人を「80kg×5回だから同じ」と評価するのは適切ではありません。
ベンチプレスでは「レップの質」を見る
ポイント
5/3/1では、決められた回数をこなすことだけでなく、フォームを維持しているかを確認することが重要です。
特にチェックしたいのが、
- 肩甲骨の位置
- 胸の張り
- 足の位置
- バーを下ろす位置
- 前腕の角度
- バーの軌道
- 胸からの切り返し
- 脚の使い方
です。
初心者の場合は、まず「重量を増やす」よりも、毎回同じフォームで挙げられることを優先したほうが、結果的に重量を伸ばしやすくなります。
公式の5/3/1 for Beginnersでも、フォームを崩したり、レップが極端に遅くなったりした場合にはTMを上げないという考え方が示されています。
これはベンチプレスでも非常に重要な考え方です。
5/3/1でベンチプレスが伸びない人が見直すべき5つのポイント

ポイント
5/3/1で記録が伸びないときは、すぐにプログラムを変更するのではなく、TM・頻度・ボリューム・フォーム・回復の5つを順番に確認しましょう。
「5/3/1を始めたのにベンチプレスが伸びない」
という場合、プログラムそのものが悪いとは限りません。
むしろ、設定やトレーニングの組み方に問題があるケースがあります。
① トレーニングマックスが高すぎないか?
結論
最初からTMを高く設定すると、後半の週で重量が重くなりすぎ、5/3/1の長所である継続性を失いやすくなります。
例えば本当の1RMが100kgなのに、
「調子が良かったから105kgを1RMとして計算しよう」
とすると、TMも高くなります。
その結果、3週目にはかなり厳しい重量になってしまいます。
5/3/1では、
「軽すぎるかな?」くらいから始めることが、むしろ長期的な進歩につながる場合があります。
これは公式の5/3/1でも一貫して重要視されている考え方です。
② ベンチプレスの頻度が少なすぎないか?
結論
ベンチプレスの技術を伸ばしたい人は、週1回だけ重いベンチプレスを行うより、複数回の練習機会を作ったほうがフォームを磨きやすい場合があります。
特に初心者の場合、ベンチプレスは「筋力」だけでなく「技術」の影響が大きい種目です。
例えば週2回なら、
- 1回目:5/3/1のメインセット
- 2回目:軽めのベンチプレスでフォーム練習・ボリューム確保
という考え方があります。
実際、Wendler氏の「5/3/1 for Beginners」では、週3回の全身トレーニングの中でベンチプレスを複数回行う構成が紹介されています。
ただし、ここで重要なのは、
「ベンチプレスを増やせば必ず強くなる」わけではない
ということです。
頻度を増やした結果、疲労が抜けなくなれば逆効果です。
③ メインセット以外のボリュームは足りているか?
ポイント
メインの5/3/1セットだけではトレーニング量が不足する人もいるため、目的に応じて追加セットや補助種目を組み合わせます。
5/3/1には、メインセットの後に行う補助的なトレーニング方法が複数あります。
例えば公式には「Boring But Big(BBB)」という方法があり、メイン種目の後に5セット×10回の追加セットを行う構成が紹介されています。
ただし、これは、
「5/3/1をやったら全員5×10を追加すればいい」
という意味ではありません。
ベンチプレス初心者がいきなり大量のボリュームを追加すると、フォームが崩れたり、回復が追いつかなかったりする可能性があります。
中上級者であれば、
- 筋力向上
- 筋肥大
- 技術練習
- 弱点克服
のどれを優先するかによって、追加セットの量を変えるべきです。
ただし、補助種目を増やせば増やすほど良いわけではありません。
ベンチプレスの頻度、現在のMAX、トレーニング歴、回復力などを考えて調整する必要があります。
④ ベンチプレスの弱点を放置していないか?
ポイント
ベンチプレスが伸びない場合は、単純に胸を鍛えるだけでなく、「どの局面で失敗しているか」を確認することが重要です。
例えば、
「胸からバーが離れない」
のであれば、
- 胸での受け方
- 背中の固定
- 脚の使い方
- バーの下ろし位置
などを確認します。
一方、
「胸からは離れるけれど最後まで押し切れない」
のであれば、
- 上腕三頭筋
- ロックアウト
- バーの軌道
- 肩の使い方
などを確認します。
このように、「ベンチプレスが弱い」という一言でも原因は人によって異なります。
ここを見ずに、
「もっと高重量をやろう」
「もっと胸を鍛えよう」
とするのは、必ずしも正解ではありません。
⑤ 睡眠・食事・体重はどうなっているか?
ポイント
トレーニングプログラムだけでなく、回復に必要な睡眠・栄養・体重変化もベンチプレスの伸びに影響します。
特に減量中は、ベンチプレスの記録が伸びにくくなることがあります。
「5/3/1をやっているのに重量が伸びない」
と思っていても、
- 体重が減っている
- 食事量が少ない
- 睡眠時間が短い
- トレーニング以外の疲労が大きい
という可能性があります。
トレーニングだけを見て判断しないことも、長期的に強くなるためには重要です。
中上級者が5/3/1をベンチプレスに使うときの考え方
ポイント
中上級者は5/3/1の数字をそのまま追うのではなく、ベンチプレスの頻度・ボリューム・弱点・疲労を管理する「土台」として使うと考えると応用しやすくなります。
ベンチプレス歴が長くなると、
「5/3/1の数字をこなすだけでは足りない」
と感じることがあります。
これは不思議なことではありません。
トレーニング経験が増えるほど、必要な刺激や回復力には個人差が出てきます。
そこで重要になるのが、5/3/1を「固定されたメニュー」ではなく、プログラミングの考え方として理解することです。
TMは「現在の実力」ではなく「トレーニングを進めるための基準」
ポイント
TMは「今の本当の1RMを正確に表す数字」ではなく、トレーニングを継続するために設定する基準値と考えると理解しやすくなります。
例えば1RMが100kgだからTM90kg。
これは単純な計算です。
しかし、実際には、
- その日の体調
- フォーム
- 競技ルール
- 補助者の有無
- 可動域
- レップの質
などによって「100kg」の意味は変わります。
そのため、TMを高く設定することが必ずしも優れたプログラムにはなりません。
むしろ、
「余裕を残した状態で、次のサイクルにつなげられるか」
を見ることが重要です。
上級者ほど「重量」だけでなく「疲労」を見る
ポイント
レベルが上がるほど、単純な重量更新よりも、疲労をコントロールしながら高品質なトレーニングを積み重ねることが重要になります。
例えば、
「前回は90kgを5回できた」
という情報だけでは不十分です。
同じ90kgでも、
- すべてのレップが速かった
- 最後だけ少し速度が落ちた
- 5回目が限界だった
- 途中でフォームが崩れた
では意味が違います。
中上級者であれば、動画を撮影してフォームとバーの軌道を確認するのも有効です。
特にベンチプレスは、自分では「いつも同じフォーム」のつもりでも、疲労によって、
- 肩が前に出る
- 胸の高さが変わる
- 足が動く
- 下ろす位置がズレる
といった変化が起こります。
数字だけでは見えない部分をチェックすることが、停滞突破につながることがあります。
ベンチプレスを伸ばすために5/3/1をどう使えばいい?

ポイント
5/3/1は、ベンチプレスを毎回限界まで追い込むのではなく、適切なTMからスタートし、質の高いトレーニングを積み重ねながら長期的に重量を伸ばしたい人に向いています。
ここまで解説した内容をまとめます。
5/3/1の基本は、
- 1RMを確認する
- 1RMの約90%をTMとして設定する
- TMを基準に各週の重量を計算する
- 1週目は5回
- 2週目は3回
- 3週目は5・3・1回
- 4週目はデロード
- 次のサイクルへ進む
という流れです。
しかし、本当に重要なのはこの数字だけではありません。
ベンチプレスの重量を伸ばすためには、
| 重要な要素 | 確認するポイント |
|---|---|
| 重量設定 | 適切なTMからスタートできているか |
| フォーム | 毎回安定したフォームで挙げられているか |
| 頻度 | 自分に合った練習頻度になっているか |
| ボリューム | 必要なトレーニング量を確保できているか |
| 回復 | 睡眠・栄養・疲労を管理できているか |
特に初心者の場合は、最初から重量を追いかけすぎないことが重要です。
ベンチプレスは単純に胸の筋肉だけで挙げる種目ではありません。
肩甲骨を安定させ、胸郭を作り、足で身体を支え、適切な軌道でバーを動かす。
こうした技術を身につけながら筋力を高めていく必要があります。
一方、中上級者の場合は、
「5/3/1の数字をこなしているのに伸びない」
という段階が来ることがあります。
その場合は、
- TMが高すぎないか?
- ベンチプレスの頻度は適切か?
- 必要なボリュームを確保できているか?
- 弱点はどこなのか?
- フォームは毎回安定しているか?
- 回復は十分か?
という順番で確認してみましょう。
5/3/1は、単に「5回・3回・1回を行うトレーニング」ではありません。
本質は、無理に限界を追いかけるのではなく、適切な負荷でトレーニングを積み重ね、長期的に強くなっていくことにあります。
実際、Wendler氏は5/3/1の初心者向けプログラムでも、TMを正しく設定すること、フォームを崩さないこと、必要以上に無理なレップを行わないことを重視しています。
だからこそ、5/3/1をベンチプレスに取り入れる場合も、
「何kgでやるか」だけではなく、「なぜその重量で、どのようなフォームで、どれくらいの頻度で行うのか」
まで考えることが重要です。
もし現在ベンチプレスの重量が伸び悩んでいるのであれば、5/3/1をそのままコピーするのではなく、現在の1RM、トレーニング歴、週の頻度、フォーム、弱点などを整理して、自分に合った形に落とし込んでいきましょう。
ベンチプレスは、今日の1回を成功させるだけの競技ではありません。
今日のトレーニングを次のトレーニングにつなげ、そのトレーニングをさらに次のサイクルにつなげる。
その積み重ねが、最終的な自己ベストの更新につながります。
そのため、5/3/1を取り入れるときは、プログラムの数字だけを見るのではなく、自分のフォームやトレーニング環境、現在のレベルに合わせて調整することが重要です。
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